2007年3月16日金曜日

雑技団の娘(その3)

雑技団の若いメンバーにとって、今回の公演は初めての海外渡航だった。それがいきなり資本主義国の日本である。
4つの現代化政策の下、日本の映画(「君よ憤怒の河を渡れ」とか「砂の器」とか)も中国で上映されるようになり、高倉健や中野良子、山口百恵が中国人の絶大の人気を集めていた頃だ。

若い団員は日本の都会の様子に驚きながらも、日本人から馬鹿にされないようにと精一杯の様子だった。
それは若いメンバーだけでなく、雑技団の幹部連中もそうだったのかも知れない。海外に出るために着慣れない背広を身にまとい社会主義中国の代表として、日本の何を見てもそんなものには大して興味が無い、というふうを装っていたが、その実、高層ビルや地下鉄を見るときの彼らの瞳はキラキラしていた。

当時中国で最先端の都市である上海でさえも、地下鉄もないし、20階を越える高層ビルはなく、あるのは租界時代にイギリスやフランスが建てた古いビルだけであった。
自家用車は存在せず、自動車に乗っているのは幹部だけ、それも「紅旗」とか「上海」という国産車のみで、外国車はなかった。個人で所有できる乗り物は自転車だけ。それも彼らの経済感覚で言えば、自転車1台が日本人にとっての自動車1台に相当した。
だから、上海の南京路などは朝夕自転車の洪水だ。トーローリーバスも普通のバスも人であふれかえり、かの国の近代化の勢いと混沌を感じさせた。

さて、平日の休憩時間(昼寝タイム)に数名の雑技団員を連れて宿舎の隣にあった百貨店に観光(?)に行った。
団員の2名が美容院でパーマをあてたいと言い出したので、急遽僕が同行することになった。遠いところへは行けないので隣の百貨店に行くことにしたのだ。それを聞いた別の3名ほどの若いメンバーが、百貨店の中を見たい、と言ったので一緒することになった。

美容院代は当然日本側が払う。事務局に請求してもらうことになっていた。美容院に2名を置いて、僕は若いメンバーに日本のデパートの中をあれこれと案内した。
あふれる豊富な商品、おしゃれな看板、最新のファッション、身だしなみを整えた品の良い店員、着飾った客たち、彼らにとってはすべてが珍しく、羨望の対象だった。
しかし、彼らの持っている金額ではそのどれも買うことができない。さすがに日本側もそこまでの金は出せない。ただ見ているだけしかできない…。
そのときの彼らの悔しそうな顔を僕は忘れることができない。

(つづく)
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