2007年3月21日水曜日

あるアフガニスタン人留学生の話

かなり古い話で恐縮だが、僕にはどうしても忘れられない一人のアフガニスタン人がいる。
1978年の秋だっただろうか。ちょうど僕が大学へ入学した年のことだ。

授業やサークル活動のない時、僕は友人たちと大学の近所にある喫茶店によくたむろしていた。
その喫茶店はその年の春、脱サラしたマスターとその奥さんがはじめたコーヒー専門店で、たまたま開店当日に顔を出した僕は、それ以来行きつけの店になり、キャンパス生活にも慣れた頃にはすっかり常連になっていた。僕にとってはいわば隠れ家的な喫茶店だった。

その日もいつものように昼からその店でウダウダと過ごしていた時、店のドアが開いて一人の背の高い外国人が入ってきた。
どこの国の人だろう?インド人か?
それが僕の彼に対する第一印象だった。
日本人より浅黒い肌、堀の深い顔、身長は185センチくらいあり、かなりのハンサムだ。その時まで外国人といえば欧米人(それもほとんどアメリカ人)くらいしか見たことがなかった僕にとって、中近東の人を見るのは初めてだった。

彼は、マスターに意外なほど流暢な日本語で「モカ」を注文した。外国人にありがちなおかしなアクセントもない。僕は再び驚いた。
その時の店は空いており、僕と彼のほかに客はいなかった。
はじめこそ驚いたものの、知ることに関しては貪欲なマスターが話しかけ、いつしか奥さん、そして僕まで一緒になって話の輪に入っていた。

それが、アリーさんだった。
アリーなんというのかは忘れてしまった。
話しているうちに、彼がアフガニスタン人で、25歳。うちの大学の経済学部の留学生だということが判った。
アフガニスタンといえば、僕にはオマー・シャリフ主演のアメリカ映画「ホースメン」を見たくらいの知識しかない。マスターたちにとっては別の惑星のような感じだったのだろう。パキスタンとイランの間にある国、と言ってもピンと来ないらしい。
僕自身もイスラム圏の人と話をする(しかも日本語で!)のは初めてだったから、最初はかなり緊張して、聞きたいことの半分も聞くことはできなかった。
三人の日本人に根掘り葉掘り聞かれてアリーさんも困惑していたはずだ。
しかし、アリーさんは僕たちの初歩的な質問にいやな顔ひとつせず親切に答えてくれた。

その後彼とは何度かその店で会い、その都度僕はアフガニスタンについての知識を深めていった。

彼は驚くほどに博識だった。元々アフガニスタンでは上流階級の出身らしい。父親は外交官で、彼自身も以前は政府に勤めていたと言った。そのおかげで、彼は外国へ行く機会が多かったという。
ダリー語(アフガニスタン語だ)とペルシャ語、アラビア語、英語、フランス語、中国語に日本語が喋れる語学の天才でもあった。
中国文学を専攻する1年生の僕からすれば信じられないくらいうらやましい話だ。

彼からアフガニスタンの歴史を教わった。
中近東の他の国と同様に、イギリスの植民地(アフガニスタンの場合は保護領)になったが、第二次大戦中に独立したこと。
ほんの数年前(1973年)に無血クーデターがあって王制から共和制になったこと。
しかし、この年(1978年)の春に軍事クーデターがあって社会主義政権になったことも。

彼の父親は中立的だったことと、外交と言う分野のスペシャリストという肩書きが物を言い、政権が変わってそれなりの立場を維持できているようだった。
彼自身も共和制の時には役人を勤めていたが、今は政府の命令で国費留学生として日本に来ている、ということだった。
だが、それ以上の政治的な話はあまりしなかった。共産政権の下では、彼の立場も磐石ではなかったのだろう。

彼はアフガニスタンのセレブだ。下宿も3LDKのマンションだと言う。
着ている服も上等なものだった。カジュアルもスーツ姿もお洒落だった。
彼は話し上手で聞いているものを飽きさせることが無かった。
ヨーロッパ風の教育を受けた彼はかなりのプレイボーイでもあった。

喫茶店の常連たちと(もちろんマスターと奥さんも一緒に)、飲みに行ったり、ボウリングに行ったりもした。その店の常連たちで催されるイベントは結構あり、新年会、歓迎会(誰の歓迎?)、花見、花火、忘年会と飲み会が多かった。アリーさんは半分くらいは参加していたように思う。

ところが1979年の冬、ソ連(当時)のアフガン侵攻が始まった。
共産政権に対する叛乱は部族やイスラム養護主義者を中心に各地方で起こっており、弱体化した政権を支援するためソ連が軍隊を侵攻させたあの事件である。

アリーさんはぷっつりと店に来なくなった。
帰国したのだとも、アメリカに亡命したのだとも、まことしやかに言われたが、真相はわからないままだ。

アリーさんはどうしているのだろう?
今も時々、彼の人懐っこい笑顔を思いだす。

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